学校に近付くにつれて、通学路には帝光の制服が目立ってくる。


鼓動が速まっていくのが分かった。
不安から表情が硬くなる。
しかし、なぜか平常心を保っていられた。

今日は念を入れて、普段より早く家を出たから、きっとそれが原因だろう。
これだけ早い時間ならば、青峰先輩や黄瀬先輩とは会うことなく学校に行けるに違いない。
それを見越した上で早めに家を出たのだ。
いくらなんでも先輩たちに対して失礼かもしれない、そう思ったけれど、会ったところで散々な結果になることは目に見えていた。
そんなことになるくらいなら、最初から意識して会わなくていいときは会わないようにこちらから行動するしかない。


しかし、早い時間のせいか通学路を歩いている生徒の数はまばらで、不安に思っていた陰口さえ聞こえてこなかった。
それでも早く学校に行こうと思い、足早に歩いていく。
これからはこのくらい早い時間に行こうかな、そう思ったところで前方に見慣れた後ろ姿を見付けた。
少し躊躇ったけれど、人が少ないのをいいことにその背中に駆け寄っていく。



「赤司先輩」

「…純奈?」

「おはようございます…」

「おはよう」



会えないかな、なんて微かな期待を抱きながら歩いていたら本当に会えてしまった。
嬉しくて何を言えばいいのか分からない。
それにしても、赤司先輩はこんなに早い時間から学校に行っていたなんて。
今日ほど早い時間に学校に行ったことがなかったから、これまで通学の時間帯になかなか赤司先輩に出会わなかったことに少しだけ納得がいった。
赤司先輩も意外そうな顔でこちらを見ている。






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