act.7










「今日は朝礼のミーティングには出なくてもいいから、部員の人たちのドリンクとかタオルの用意しておいてくれないかな?」



まだ部活も始まっていないのに、いきなりこんな目に遭うなんて。

美里香が桃井先輩に泣きつくように訴えるものだから、私は完全に誤解されてしまい訂正する間さえ与えてもらえなかった。
そもそも、美里香は以前から私にいじめられているとあらゆる人に吹き込んでいるようだ。
美里香にどうしてこんなことをされるのか理由が分からない。
今までの自分の行動を思い返してみても、美里香の逆鱗に触れるようなことはしていないと思う。

結局、桃井先輩と美里香に睨みつけられてしまい、居た堪れなくなって急いで更衣室から出ていった。
一人で大量のスポーツドリンクの粉末が入った重いかごを持って、とぼとぼと体育準備室に向かっていく。

帝光バスケ部には100人以上の部員がいる。
その人数のものを一人で用意するにはとんでもない時間がかかりそうだった。
普段は美里香と二人で用意していたから分担して作業ができて、そこまで時間はかけないで済んでいたけれど。
美里香ほど手際がよくないことはよく分かっていたから、今日はかなりの時間がかかりそう…と純奈は小さな溜息を吐く。

桃井先輩の呆れたような怒っているような目を思い出してしまい、なんだか全てが嫌になってしまいそうになった。

間近にいる美里香があんなに笑っているのにどうして気付かないんだろう?

そんなことを考えても何の意味もないことは分かっているけれど、考えずにはいられなかった。
ただ、この理不尽な状況が悲しくて、それでもどうしようもなくて純奈は溢れそうになる涙を堪える。



「やっぱり…辞めた方が…よかったかな…」



気持ちが揺らぎそうになる。
けれど、そのとき今日の昼休みに赤司先輩と話をしたことを思い出した。
よく分からないけれど赤司先輩は私の話を唯一しっかり聞いてくれたのだ。
それでも赤司先輩は全然分からない。
本心では何か別のことを考えているのかもしれないと思うと怖くて怖くて仕方ない。

そろそろと準備室のドアノブに手をかける。
誰もいませんように、そう思いながら開けるけれど誰もいなかった。
ほっとして自分の作業を始めることにする。
することはたくさんあるから早くしていかないと、自分に言い聞かせながらバスケ部の備品の棚から給水器を取り出した。
















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