act.30










「そうだ、間宮さん」



赤司先輩と黒子先輩が帰ろうとしていたとき、黒子先輩がベッドの方に近付いてきた。
思わず姿勢を直してしまう。

何か言い忘れたことでもあるのかな、そう思いながら目を向けると何かを手渡された。
綺麗な色合いの袋に包装された飴だ。
黒子先輩には、こんなものをくれるようなイメージが少しもなかったものだから思わず見上げてしまう。
状況を理解できていないことを察してくれたのか、黒子先輩に小さく微笑みかけられた。



「紫原くんからもらったもので何なんですが…間宮さんにあげます」

「え…黒子先輩がもらったのに、いいんですか?」

「もともとは、紫原くんがお見舞いで間宮さんにあげるために買ってたみたいなので問題ないと思います」

「そうなんですか…じゃあ、いただきますね。ありがとうございます」

「はい、どうぞ」



ここで受け取らないわけにはいかないような気がして、黒子先輩の手から飴を受け取る。
それは見たことのない種類の飴だった。

紫原先輩には、たまにバスケ部の練習の合間にお菓子をあげていたような気がする。
それにしても、あの紫原先輩がこんな風に気遣ってくれていたなんて考えもしなかった。
滅多なことがない限り、他人に関心を示さないような印象を抱いていたものだから、失礼ながらに意外だと思ってしまう。
しかし、こんなことをされてしまって、先輩たちに嫌いと言ってしまったことに改めて胸が痛んだ。
言い放ってしまった現場に紫原先輩がいなかったとはいえ、それは何の救いにもならない。
誤解が解けて、また気兼ねなく会話ができるような日々が戻ってきてほしいと切実に思いながら飴の袋を見つめる。






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