act.28










黒子先輩と桃井先輩が病室から出ていっても、手の震えが止まらなかった。
がくがくと小刻みに震える手を押さえるように重ねていた手も震えていて、体が言うことを聞かない。
頭の中では先程までの光景が色濃く鮮明に残っている。



美里香に…先輩たちに、なんてことを言ってしまったんだろう…。



取り返しのつかないことをしてしまった。
一時の感情に身を任せた結果がこれなんて。
口撃だけに留めて、美里香の手を跳ね除けたりしなければよかったのかもしれない。
美里香のしていることに我慢できなくなって、先に言い出してしまったのは自分の方だ。

だからこそ悔やみきれない。
あれは、あまりにも酷い状況だった。
全てが終わってしまってから事の重大さに気付くなんて、どうかしている。
あの場に赤司先輩と紫原先輩がいなかったとはいえ、他の先輩たちがいたことは考えなくても分かっていたはずだ。
これでは弁明の余地がない。


先輩たちの怒っている顔が頭に浮かんだ。
怪訝そうな表情をしていたことも、すぐに思い出せる。
でも、思い出したくなんかない。
いくら堪えられなかったとはいえ、先に切り出したことはまずかった。
大嫌いと言われて嫌な気分にならないはずがない。

陰で懸命にフォローしてくれていた黒子先輩にも幻滅されてしまっただろう。






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