act.27










時間が止まってしまった。
そんなありえないことを思ってしまうほどの重苦しい沈黙が流れる。
病室の外から聞こえてくる人の声や物音さえ、とても遠い世界のもののように感じた。





純奈に拒絶されてから、美里香は全く動かない。
信じられないと言わんばかりの目で純奈を見つめている。
それでも純奈は目を合わせようとしない。
深くうつむいて、毛布の裾を固く握り締めていた。

病室にいる全員の表情がはっきりと分かってしまうほどに曇っていく。

このままでは誰かとんでもないことを言い出してしまうかもしれない。
危うい空気を即座に感じ取った黒子が口を開こうとしたけれど、それは遮られてしまった。



「ちょっと…何言ってんスか!?」

「黄瀬くん…!」



純奈と美里香のやりとりの一部始終を見ていて、とうとう居ても立ってもいられなくなったのか黄瀬が声を上げる。
すぐに黒子が黄瀬を制止しようとしたけれど、黄瀬の勢いを見ただけでとても抑えられる気がしなかった。
黄瀬は仲介に入ろうとする黒子に目を向けることもなく、怒りを孕んだ瞳で純奈をじっと睨みつけている。


間宮さんは、どうしてあんなことを言い出してしまったのか。
この期に及んで何の理由もなく見咲さんに言い出すとは考えられない。
見咲さんに何か言われたことは間違いないだろう。
でも、いつの間に…後ろから注意深く二人を見ていたつもりだったけれど、気付かなかった。


黄瀬の一声を引き金に、空気はさらに張り詰めたものになる。
あまりの居心地の悪さに黒子は息を呑んだ。






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