act.26
病院に到着した。
ここに来るのは一週間ぶりだ。
土曜日だからか、人の行き交う姿が多く目につく。
黒子はずっと傍にいた桃井から少しだけ身を離して、赤司の様子を窺った。
みんなの中では、これまでの間で赤司くんだけが間宮さんのお見舞いに行ったことがあるという話になっている。
そういうことになっている以上、自分はあまり行き過ぎた行動がとれないということは理解していた。
それに自分が言っても通用しない話でも、赤司くんが言えば文句を言い出す人もいないだろう。
院内に入っていって、待合室まで来たところで赤司は立ち止まった。
つられるように全員も足を止める。
赤司はちらりと目配せをして、口を開いた。
「僕は受付で面会の手続きをしてくる」
「…それならここで待っているのだよ、赤司しか病室は分からないんだろう」
「そのことについては心配ない。黒子に詳しいことは伝えておいた」
「え?」
「大丈夫だろう、黒子」
「は…はい」
まさか自分に話を振ってくるなんて思いもしていなかったのか、黒子は目を丸くする。
しかし唐突とはいえ、曖昧な返事をすることもできず、小さく頷いた。
赤司が堂々とした態度を貫いているからこそ、全く違和感がない。
緑間でさえ、少し考えるような素振りを見せたものの何も言い返さなかった。
全員が納得した様子を見てから、赤司は話を続けた。
「僕は手続きが済んだら行くから、先に行ってくれ。すぐに終わるか分からないからな」
「赤司くん…」
「じゃあ、頼んだよ」
黒子の方に目を向けて意味深に呟き、赤司は一人で受付に向かっていく。
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