act.23
着替えを済ませてから体育館に入っていくと、黄瀬くんと緑間くんが揉めている姿が目に留まった。
少し遅れて来てしまったから朝礼はもう終わっているようだ。
持ってきていたリストバンドをつけながら二人のやりとりを遠目で見つめる。
どうやら、黄瀬くんが何か頼み込んでいるようだけれど緑間くんが聞く耳を持たないといった様子だ。
二人のやりとりが少しだけ気になって、近付いていった。
「何かあったんですか?」
「あ、黒子っち…いいところに」
「…黒子か。黒子に話してみたらいい」
「だから!緑間っちにも来てもらわないと困るんスよ!」
「とにかく、さっきの話は少し考えさせてもらうのだよ。即決はできん」
「…分かったっス」
挨拶もほどほどに、やれやれと困ったような溜息を吐いて自分の練習に戻っていく緑間。
状況をつかめないまま緑間に去られてしまい、黒子は黄瀬に目を向けた。
黄瀬は黒子に一瞬だけ目を下ろしたけれど、どのように話を切り出せばいいか迷っているのか頭をかいている。
けれど、黒子の無言の眼差しに堪えられなくなったのか、少ししてから口を開いた。
「…緑間っちに、お見舞いに行こうって話してたんス」
「お見舞い?まさか…」
「うん、純奈ちゃんの…」
「…」
一体どうしたというのだろうか。
黄瀬の考えていることが理解できなくて黒子は言葉を詰まらせた。
今の状況下で赤司がこういうことを言い出したのならば何の疑問も感じることなく話は進められるだろう。
しかし、黄瀬が突然こんなことを自発的に言い出すなんて、申し訳ないけれどとても考えられない。
第一、昨日まで純奈に対して無関心な態度だったのに、一体どういう風の吹き回しなのか。
間違いなく何かあったのだろう、そう思った黒子は自らの表情を気にしながら返事をした。
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