act.20










あれから数日が経った。

見咲さんの様子をしばらく窺っていたけれど、間宮さんがいなくなってからいつもの見咲さんに戻りつつあるような気がする。
もちろん表面上だけだろうけれど。
安心したのも束の間、青峰くんとの貴重なパス練習を自分からしなくていいと言い出してしまったことは多少なり練習に影響を与えていた。
もともとパス練習ばかりを繰り返していたため、相手になる人がいないことには何もできない。
おまけに自分のパスはまだキセキの人しか上手く対応することができなかったから、あの日から一人で延々と基礎練習ばかりをこなしていた。

たまにはシュート練習でもしようか、そう思いながら黒子はゴール下に向かっていく。
ボールを投げてみるけれど、なかなか入らない。
得点率はあまり重要視していなかったせいか、そのつけが今になって回ってきてしまったと心の中で溜息を吐いた。
ゴールリングを神妙な顔で睨みつけていると、後ろから黄瀬くんの声が聞こえてくる。



「黒子っち!最近、青峰っちとパス練してないんスね」

「黄瀬くん…そうですね、おまけに今日は青峰くん、来てないみたいですし」

「んー…俺でよかったらパス練習の相手するから、どうかなー…なんて」

「え?」

「あ、もちろん黒子っちがよければなんスけど」



そう言って黄瀬は黒子に笑いかける。
おそらく一人で練習していた黒子のことを気にして声をかけたのだろう。
それは黒子にとってこの上なくありがたい申し出だった。
黄瀬の練習時間を割いてしまうことに多少の心配をしながらも、黒子は小さく頭を下げる。



「すみません、少しの時間で構わないのでよろしくお願いします」

「やった!」



日頃から黒子とパス練習をする機会が少なかったからか黄瀬は嬉しそうに小さく拳を握った。
黄瀬ならば練習相手としての不足はない。
声をかけてくれた黄瀬に感謝をしながら黒子はパス練習を始めた。


あれから、間宮さんの話さえ持ちかけなければキセキの人たちと普通に会話をすることができた。
間宮さんのためにもここでわざわざ仲違いをするようなことをしてはいけない。
その一心で黄瀬くんに微笑みかける。

黄瀬くんだって、本当は気のおけない優しい人なのだ。











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