二人で病院内にある中庭までやってきた。
人がまばらに行き交う中、赤司はさらに先に進んでいって空いているベンチに腰を下ろす。
その隣に黒子が座ると赤司が唐突に口を開いた。
「ここには何度か来てたんだろう?」
「え、どうして知ってるんですか?」
「先生が教えてくれた。純奈が病院に運ばれた翌日に黒子が入院先を聞きに来たと話してくれて…」
「…そうでしたか…」
「どうしてだ?」
「それは…」
「純奈に聞いてもいいけど、きっと泣くだろうからね。黒子からもちゃんと聞いておきたいんだ」
「…」
あの日のことを今ここで赤司くんに話すべきか話さないでおくべきか。
黒子の顔付きが険しくなる。
とんでもないことだからこそ伝えることに躊躇いが生じた。
でも、この問題を一人で抱えているのはいけないことなのかもしれない。
自分一人の力で解決できる許容範囲を大きく超えた事態にまでなってしまったのだ。
病室で自分を見て怯えていた純奈の顔を思い出し、目を閉じた。
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