「黒子先輩…だったんですか…?」

「…え?」

「今まで、何度か夜に病院に来てたって…」

「…知ってたんですか?」

「…聞いた、だけです…だけど、黒子先輩だったなんて…」

「自分勝手な理由なんですが…間宮さんの目が覚めたら、すぐに話したかったんです。だから学校帰りに…」



そこまで言うと黒子先輩は下を向いてしまった。

春日さんが話していた夜に来ていた人というのは多分、黒子先輩のことだろう。
昨日は来なかったけれどそれ以前は何回か来ているような口ぶりだった。

気付いたときには黒子先輩がすぐ傍まで来ていて、そっと手を握られる。
手が触れた瞬間、怖くて引っ込めようとしたけれどなぜか振り払えなかった。
車椅子に座っている自分と目線を合わせるように黒子先輩は身を屈める。



「ごめんなさい…間宮さんの話、少しも聞かなかったですね。いつも見咲さんのことばかりで…見咲さんばかりに目が行って…」

「…」

「…入院まですることになったのは…僕のせいでもあります」

「…」

「これから間宮さんのためにできることを考えて、してあげたいです。させてほしいです。…それだけは、知っておいてほしくて」



不安そうな表情の黒子先輩をあまり見たことがなくて何も言えなかった。

今までのことに少しでも申し訳ないと思ってもらえたことは嬉しい。
こうしてわざわざ謝りにきてくれたことも、目が覚めるまで病院を訪れてくれていたことも。
それでもこんなにすぐに黒子先輩を許せるほど人間ができていない。
謝ってくれてよかったと思ったはずなのに、心は全く晴れなかった。


…やっぱり…すぐになんて、許せないよ…。


押し黙っていると、黒子先輩は頭を下げて何も言わずに病室から出ていった。
















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