「赤司先輩」

「…どうした?」

「あの、そこにある私の鞄…とってくれませんか?」

「これか?」

「はい」



純奈が指差した先にある学校用の鞄を赤司から受け取ると、純奈は中を開けて何かを探し始めた。
赤司は何をするつもりなんだという表情で純奈を見つめている。
それからすぐに純奈は鞄の中から小綺麗な袋を取り出して、それを赤司に差し出した。
状況がつかめないまま赤司は袋を受け取る。



「…これは?」

「前に赤司先輩から借りたハンカチとタオルです…ずっと、ごめんなさい」

「あのときの、か」

「あの日…これ、返すためにも部活に行こうと思ったんですけど…もう渡せなくなるかと、思った…」



純奈の声が少しばかり震えていることに気付いた。
受け取った袋を見つめて、赤司は純奈に向かって呟く。



「…縁起でもないことを言うな」

「…はい」

「…」

「赤司先輩…?」

「…ありがとう。今日はもうそろそろ帰るよ」



何か言おうとしたように見えたけれど、赤司先輩は何も言わなかった。
本音とはいえ本当に縁起でもないことを言ってしまったと少し反省する。

最後に病室のドアノブに手をかけたとき、ベッドにいる純奈の方に振り返った。



「…また明日、来られそうだったら来るよ。さっきの話はそのときに教えてほしいな」

「…はい」

「じゃあ、また」

「あ、あのっ!…赤司先輩…色々、ありがとうございます…」



戸が閉まる瞬間に見えた赤司先輩の顔はどことなく微笑んでいるように思えた。


赤司先輩がわざわざ来てくれて本当に、本当に嬉しい。

赤司先輩には助けられてばかりだ。
私…もっと頑張らないと…。
















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