「それなら純奈…あんた…赤司先輩に何をしたの…?何を話したの…?」

「何もしてない、何も言ってない…!」

「嘘!何か言わなきゃ、どうして赤司先輩があんなこと…大体どうして赤司先輩があんたの話なんかまともに聞くの!?」

「ちょ、ちょっと…美里香…」



こんな美里香は今まで見たことがない。
憎悪、動揺、苛立ち、どんな言葉でも表現できないほどの美里香の迫力に純奈は思わず後退りをするけれど二人の距離はどんどん縮まっていく。

とにかくここは場所が悪い。
階段の少し先を見れば踊り場が見える。
そんなことにはお構いなしに美里香は歩を緩めることなく距離を詰めていった。



「本当…何なの…?あんた…あたしのことイラつかせる天才よ…ふざけないで…」

「や、やめて…」

「どこまであたしに嫌な思いさせれば気が済むのよ!あんたみたいな奴に何回もこんな思いさせられるなんて…」

「来ないで…お願いだから、それ以上…」



「ここからあんたが落ちてくれたら、全部…終わるかもしれない…純奈、死んでよ…あたしのために…」



美里香の手が伸びてきて、その数秒後には足が地面から離れていた。
体が宙を浮く。
支えになりそうなものが何もないことを瞬時に悟った。





「きゃあああああああああッ!!」





劈く悲鳴が静寂を打ち破る。
あっという間の出来事だった。
バタバタと落ちていく音が辺りに響く。
最後に一瞬だけ見えた美里香の顔は、やっぱりあのときと同じように笑っているように見えた。

口元が動いていて何かを呟いたかのように見えたけれど、それからは何も聞こえてこない。

全ての音が止んだ。










頭部に何か温かいものを感じる。
そして、目の前に赤いものが広がっていた。



…血だ。

自分の血が、血溜まりとなって踊り場を赤く染めていく。



そこで意識は完全に途絶えた。





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