昼休みも終わりそうな時間になった。
そろそろ教室に戻らないといけなくてまた校内に入っていく。
残りの授業のことを考えながら廊下を歩いていると、先の方に赤司先輩の姿が見えた。
今日は朝から色んな先輩を見かけるな…そんなことを思いながら赤司先輩を見つめる。
今朝の美里香との会話を思い出すと声をかけていいものか迷ってしまい足がなかなか動かない。
それでも前方にいる赤司先輩を追い越さなければ自分の教室に戻ることができないのだ。
少し迷ったところで、意を決して声をかけてみることにした。
「赤司先輩…」
「…純奈?」
名前を呼ばれて振り返った赤司は、まさか純奈に声をかけられたとは思いもしなかったようで意外そうな顔をしている。
「…おはようございます」
「ああ、おはよう」
「あ、あの、赤司先輩…」
「なんだ?」
「……よかった…」
ふっと薄い笑みを浮かべる。
今にも泣き出してしまいそうな純奈の顔を見て赤司は何も言うことができなかった。
何があったのか分からないだけにどうすればいいのか分からない。
何があったんだ?
いっそのこと聞いてしまおうかと思ったけれど聞けなかった。
聞いたらまた泣いてしまいそうな気がしたから。
そもそも純奈が何があったのかを話してくれるまでこちらからあれこれ問いただす気は最初からなかった。
「ええと…昨日は、ありがとうございました…」
「そのことか。気にしなくていい」
「…はい…それじゃ、失礼します…」
「純奈」
「…なんですか?」
「…なんでもないよ。またあとで」
純奈と別れるとき、どことなく引っかかるものを感じて呼び止めてしまった。
しかし何の根拠もない違和感であることもあり赤司は何も言わずに純奈と別れた。
また部活に来たときに様子を見よう。
そんなことを思いながら赤司は自分の教室に戻っていった。
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