一軍のレギュラーを含めた全員は、異様な光景を目前に固唾を呑んだ。
あの赤司がタオルを配っている。
それは未だかつて見たことのない衝撃的な光景だった。

レギュラー以外の一軍の面々は、赤司の考えていることが全く理解できないような様子でなんともいえない表情のままタオルを受け取っている。
とんでもないことが起きていると事態の重大さを感じた緑間が赤司のところに飛んでいった。
その近くで個人メニューをこなしていた黄瀬と紫原も緑間についていく。



「赤司!練習にいないと思っていたら…どこに行っていたのだよ!というか、さっきから給水器を運んできたりタオルを持ってきたり…!」

「そう喚くな…僕がそういうことをするのはそこまで珍しいことか?」

「当たり前なのだよ…!」

「ほ、本当に赤司っちがみんなにタオル配ってる…!なんでそんなことしてるんスか!!今日は槍でも降ってくるんじゃないすk」



最後まで言葉を言い切る前に赤司は持っていたタオルを黄瀬の顔面に投げつける。
黄瀬は酷いっス…と寂しそうに口を尖らせるけれど赤司は完全に無視していた。
煮え切らない表情の緑間にタオルを押しつけると、今度は紫原が赤司の両肩に手を置いて楽しそうに笑みを浮かべる。



「赤ちんからタオルとか超レアじゃ〜ん。俺にもちょうだい〜」

「ほら」

「…なんで赤司がこんなことを…」



緑間が呆然と呟く。
赤司は体育館の端の方で青峰と黒子が二人でパス練習をしていることに気付いた。
タオルを渡していないのは残りはあの二人だけだったから赤司は緑間たちを置いて二人の方に歩いていく。

これは放っておけないとアイコンタクトをした緑間たちは急いで赤司を追いかけていった。
追いかけてきていることに気付いているのか、赤司は呟く。



「たまには僕からタオルを受け取ることもいいだろう。ほら、使え」

「あーサンキュ…って赤司!?な、なんでお前がタオル配ってるんだよ…!?」

「あ…ありがとうございます…」

「…黒子、なんて顔をしてるんだ」

「い、いえ…意外すぎて…」

「そうかな?」



タオルを配り終えた赤司は愉快そうに笑みを浮かべた。
そこで緑間がようやく疑問がまとまったのか赤司の前にずいっと出ていく。
眼鏡を指先で押し上げながら、神妙な面持ちで静かに呟いた。



「…これはマネージャーの雑務の一部なのだよ。どういうことだ」

「用意は全て純奈がしたよ。配るのは桃井と美里香に任せている。僕がお前たちに配ってるのは僕の気まぐれだ」

「……」

「…純奈は体調が悪そうだったから今日は用意だけ全部してもらってから帰ってもらったんだ。これでいいか?」

「…ふん」

「赤司っちがいいと思うなら…」



なんともいえない微妙な表情をしたけれど誰も反論はしなかった。
タオルを配り終えてから赤司はようやく自分の個人練習に戻ることができると息を吐く。
けれど、その間に純奈のことを桃井と美里香に話さなくてはいけない。
赤司は二人がそれぞれ向かった体育館から戻ってくるのを待った。











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