「あ、あの!赤司先輩…それは私が持っていきます…」

「いいよ、僕が持っていく。純奈は残ってる作業を続けろ」



それだけ言うと赤司は純奈の返事を待たずに給水器を持って出ていってしまった。
一瞬のやりとりに呆気にとられてしまったけれど、はっと我に返る。
実際、まだまだやらないといけないことは残っていた。

純奈はタオルの置いてある乾燥室に向かっていって、軍ごとの人数分のタオルを取り出しては分けていく。
大きなかごの中にタオルを重ねているとき、ふと考えてしまった。

もしかして、赤司先輩…手伝ってくれてるの…?

その行動にどんな意味が含まれていようと誰かに気遣ってもらうのは本当に久しぶりのことで、その優しさが悲しくなってしまうほど嬉しい。
これまでキセキの先輩たちから向けられていたのは全て冷たいものだったから、余計に。

今以上に酷いことになるかもしれない。
それでも、何かを信じたかった。
赤司先輩のことを疑いたくない。
どれだけ考えたところで分かるはずもない人の本心を探ることなんて、もうしたくなかった。
赤司先輩は、私の話を聞いてくれた。これまでも赤司先輩だけは私に何もしなかった。冷たい言葉を投げつけてきたり、蔑んだ目を向けたりしなかった。
信じる理由なんて、もうそれだけでいいのかもしれない。
















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テーマ「人外ファンタジー」
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