その日から、純奈と一緒に過ごす時間が目に見えて減っていった。
部活の帰りのときも声をかけてくる純奈を無視した。
体育のときも移動教室のときも、いつもは待っていたけれど女子のグループの子たちに自分から声をかけてついていった。
でも、今までずっと一緒にいた人物と自然に離れることはとても難しい。
だけどあたしはどうすれば誰にも怪しまれることなく離れられるのかよく分かっていた。
「あたし…純奈に色々酷いこと言われてて…今まで気にしないようにしてたんだけど、気になってたの…」
縋るような瞳で誰かに話せば、誰もが『美里香にそんなことを言うなんてどうかしている』という顔をした。
そして純奈に向けられる敵意の視線。
少し話を盛ったところで変に勘ぐられもしなかった。
あたしの方が知り合いは多かったし、絶対的な信頼が自然と寄せられている。
その分だけみんなはあたしの話を嘘でも疑うことなく信じた。
純奈よりあたしを信じた。
それが堪らなく心地よかった。
あたしはただ純奈にされたことを多少の脚色を加えて話しているだけなのに、そういう話を面白がってネタにする人間は必ず一人はいるものだ。
敵意の視線は新しい嘘を次々と生み出していく。
純奈が援助交際をしているなんて噂が流れていることを知ったときは本当に笑えた。
ありえないレベルまで発展していく純奈の噂を耳にするたび、面白くてびっくりした様子を取り繕うことが大変なくらいだった。
純奈にそんなことできるわけがないのに。
絶対にそんなことをしていないという確信はあったものの否定なんかしないで、そうなんだ…と言って必死に笑いを堪えていたような気がする。
こんな風にしていけば、純奈はそのうち部活にもいることができなくなるだろう。
そうすれば先輩たちもあたしのことを見てくれる。
もうあたしには純奈なんて必要ない。いらない。
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