赤司と緑間は着替えてからすぐに部室を出て体育館に向かった。
その片手には今日の部員たちの練習メニューとレギュラーに用意した個人練習メニューの表を持っている。
黄瀬を目当てに来た多くの女子たちの間をすり抜けて進んでいくと、赤司が来たことに気付いた部員たちが何を言わずとも中央に集まってきた。

最初の朝礼は三軍が使用している第四体育館で行われる。
その次に二軍の使う第二体育館、そして最後にレギュラーを含む一軍が使う第一体育館で朝礼を済ませて赤司もその場に練習に加わるという流れだった。
三軍の朝礼が終わって二軍の待つ第二体育館に向かっていく。



「…赤司、今日は監督と話し合いはないのか?」

「ああ、ないよ」

「それは助かった。赤司がいないとまとまりがなくなってしまって大変なのだよ」



簡潔な会話だけを移動の途中で交わして、最後の第一体育館に向かった。



「これが今日のメニューだ」

「お、おい!マジでこれやるのかよ…」

「あー…これはなかなかハードっスね…」

「…よ〜し、やるか〜」

「…頑張りましょう」

「じゃあ、それぞれしっかりこなすのだよ」



それぞれが個人メニューをこなすために散っていく中、赤司はきょろきょろと体育館内を見回した。
第一体育館に来たときから純奈の姿が見えない。
美里香はミニゲームのためのスコアボードを一人で出していて、その近くに純奈はいなかった。
昼休みのときから純奈のことを考えていたものだから気になってしまう。
ちょうど近くを桃井が通りかかったものだから赤司は桃井を呼び止めた。



「桃井、純奈はどうした。朝礼のときにもいなかったみたいだが」

「あ…ええと…」

「…なんだ?」

「…今日は色々あって、純奈ちゃんには備品の準備をしてもらってるの。美里香ちゃんはコートの方の雑務で…」

「…桃井。バスケ部には部員がどれだけいるかよく分かってるだろう。純奈一人に任せたのか?」

「…うん…純奈ちゃんと美里香ちゃん、今日はどうしても二人きりにさせられなくて…」



桃井がおずおずと言葉を濁しながら話をすると赤司は溜息を吐く。
コート周りの雑務は桃井が一人で別のことをしながらでも十分できることだと分かっていた。
逆に、裏方である備品の用意は一人でするには仕事量として多すぎる。
おまけに純奈だ。一抹の不安を覚えるけれど、赤司は表情を変えずに持っていた部員たちの練習メニューの表を桃井に手渡した。



「用事を思い出したから少し外すよ。もし練習のことで部員から質問を受けたらこれを見て答えておいてくれ」

「えっ!?あ…う、うん、分かった…」



赤司は背中を向けてつかつかと歩いていく。
その背中を桃井は心配そうな目で見つめていた。
















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