「美里香…なんで、なんでなの…」

「あーうざいうざい。あたし本当にあんたと話したくないの。イライラする」

「…分からないよ…」

「一生分からなくていいんじゃない?」



笑いながら吐き捨てるように言葉を投げつける美里香は、もう自分の知っている美里香ではなかった。
純奈は着替える手が止まってしまい、ロッカーに手をかけたまま固まっている。
そんな姿をちらりと横目で見て、美里香はふんと鼻であしらった。

純奈は何も言えなくなり、それから二人の間に重苦しい沈黙が流れる。
しかしその沈黙を打ち壊すように更衣室の戸が開いた。
純奈と美里香がはっと同じタイミングで戸の方に顔を向けると、そこには不思議な顔をした桃井が立っている。
二人に一斉に視線を向けられて桃井は二人を見比べた後に美里香に声をかけた。



「な、何?どうかしたの?」



桃井先輩だ…そう思ったとき、視界の端に見えた美里香の横顔が笑っているような気がした。
なんだか嫌な予感がする。
なんでもないです、と純奈が訂正しようとする寸前に美里香が桃井先輩に駆け寄った。



「桃井先輩!純奈が、純奈が…!」

「え!?何があったの!?どうしたの!?」

「!?」



まさか、こんなことになるなんて。
純奈は想像していた最悪な展開が現実に起こってしまったような気がした。
けれどそれは容易に想像できるほど身近なものだったのかもしれない。



「純奈が、あの噂を流したのは私じゃないかって…疑ってるんです…!」





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