ずっと暗い顔をしていた黄瀬先輩がようやく口を開いた。
「…純奈ちゃんに…美里香ちゃんのことをいびりながらバスケ部を続けられるのは、俺たちとしても…嫌なんスよ」
…この会話も何回したんだろう。
いくら説明しても分かってもらえない。
いつからか、私はバスケ部のキセキの世代と呼ばれるレギュラーの先輩たちからこんなことを言われるようになっていた。
内容は“美里香に手を出していて、それによりバスケ部の活動の邪魔をしている”ということだ。
私と美里香はマネージャーでも、主に一軍のレギュラーのサポートをさせてもらっていたからこのようなことを言われているのだろう。
でも、私は本当に理解できなかった。
美里香に何かした覚えなんて一切なかったから。
それでも先輩たちは全く話を聞いてくれない。
聞こうともしてくれない。
…私はどうすればいいの…?
涙が止まらない。
人に信じてもらえないことがここまで辛いなんて思わなかった。
それを見て、居たたまれない思いになったのか青峰先輩が苦々しそうに呟く。
「お前、まだ知らないんだろうけど…学校中ですごいこと言われてんだぞ…」
「…もちろん、その噂が本当なのかどうなのかは全く分かりませんが」
「火のないところに煙は立たないのだよ」
「追っかけの女の子たちもすごいんスよ、ほんとに…」
「ねえねえ〜…帰ろうよ〜」
泣いているせいで呼吸がうまくできない。
涙を拭うことも忘れて、めんどくさそうにお菓子をつまむ紫原先輩のちょうど後ろに立っている美里香に目を向けた。
口元を隠すように手を当てているけれど手の下に少し見えた口角は愉快そうに釣り上がっている。
その悪魔のような姿を見てしまい、また絶望に突き落とされたような気がした。
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