「赤司がそうするのならば、俺はもちろん何も言わないのだよ」
「そうか」
「…ただ、赤司は迷惑だと思っていないのか」
「思ってないよ。それなら、むしろ黄瀬が引き連れてくる女子たちの方がよほど迷惑だ」
はっきりと言い放つ赤司に緑間は、これ以上は何を言っても赤司の神経を逆撫でするだけだと悟った。
退部届けの受理は部長から監督に連絡されるため赤司がこのようだとどうしようもない。
緑間は、赤司は自分と同じように純奈のことを迷惑に思っていると信じていたからこそ赤司の言葉に驚かされた。
「…おまけに、桃井には対戦相手の情報収集や敵情視察をさせているから雑務を十分に任せていられない」
「……」
「だから、決して不要ではないと思っているんだが」
赤司は手の中に出来上がった綺麗な折り鶴を緑間の机に置いた。
ラッキーアイテムである折り鶴を見て、緑間は一瞬だけ気を取られてしまう。
受け取れ、と赤司に言われて手を伸ばしかけるけれど躊躇って手を引っ込めた。
「これは俺が人事を尽くしたと言えるのだろうか…これは赤司の人事なのではないだろうか…」
「…今日はそれで我慢しろ。部活に行くぞ」
そう言って赤司は緑間に背中を向けて教室から出ていく。
素直に受け取っていいものか少し悩んでから緑間は折り鶴を手にとって鞄を担ぎ、赤司に遅れて教室を出た。
まだ廊下を歩いている赤司の背中が見えたので緑間は小走りで追いかける。
追いついて隣に並んだところで、緑間は赤司が作ってくれた綺麗な形の折り鶴を眺めながら呟いた。
「…赤司の決めることに文句は一切ないのだよ。ただ、俺は間宮に対して以前のように接するのは難しい」
「構わないさ。みんながそう思うことは仕方ない、しばらくは僕も色々しないと部活がまともにできないと分かってはいるよ」
「そこまでして間宮の肩を持つ理由が分からんが…赤司はあの多くの噂が冗談だという確信でもあるのか?」
「…さあ、ね」
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