いつの間にか目が点になってしまっていた。
ほとんど純奈のことしか話していなかったのだ。

純奈のことしか話していないなんて、まさか今までずっとみんなの中ではこんな風に純奈のことしか話していなかったのか。
そう考えると、腹の底から何か黒い塊のようなものが湧き上がってくるような気がした。
不思議な感覚に頭が可笑しくなりそうになる。


純奈ばっかり純奈ばっかり純奈ばっかり、みんなはそんなに純奈のことが可愛いの?
私の方が頭もいいのに、運動もできるのに、顔もいいのに、友達も多いのに、どうして?
みんなに優しく接してきていたのに、なんで純奈なの?
どう考えても私の方が全てにおいて優れているはずなのに、分からない。


頭の中で同じような疑問だけが渦巻いた。
答えが出てこなくて、それがまた気持ち悪い。
けれど、戸の方から飛んできた声にその黒い感情の渦は打ち消された。



「あ!美里香ちゃんじゃないスか!!」



美里香は黄瀬の声で我に返った。
暗い顔をしていたかもしれない、そう思ってすぐさま明るい表情を作る。
声のした方に顔を向けると黄瀬が部室の戸からひょっこりと顔を出していて、こちらに向かって手を振っているのが見えた。
どうやら話を盗み聞きしていたとは夢にも思っていないようだ。
とっとと出ろ、と青峰の声がしたと思ったら後ろから小突かれて黄瀬が部室からこぼれるように出てくる。

それと同時に美里香の来た方から純奈と桃井が遅れてやってきた。
キセキの面々を見付けるや否や桃井はとんでもないスピードで黒子に駆け寄って、しっかりと腕にしがみつく。
桃井が黒子に想いを寄せていることは美里香も純奈も知っていたから何も言わずにその様子を見守った。

桃井先輩は好きな人に素直にあんな風にできていいな、ぼんやりとその光景を見つめていると横から純奈が楽しそうに笑いながら呟く。






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