桃井先輩だけではなく、黒子先輩まで自分の話をしていたなんて思わなかった。
これまで聞かずにいたけれど、ずっと気になっていたことをあえて聞いてみることにした。



「…桃井先輩、なんて話してたんですか?」

「後輩マネージャーができて嬉しいってうるせえくらい言ってるだけだ」

「そうですか…」

「そんなんだから、よく名前が出てくる奴は嫌でも覚えるっつーの」



青峰先輩はアイスの棒を咥えながら、どこか別の方向を見つめている。
返事が思いつかず、アイスを一口齧った。

けれど、安心してしまう。
何か愚痴のようなものを言われているのではないかと思ったけれど、それはただの思い過ごしだったようだ。
桃井先輩には愚痴を言われても仕方ないと思っていたから、それだけが気になっていた。



「ま、新しいマネージャーができて、感謝してることもあるんだけどよ」

「感謝って…何に感謝してるんですか…?」

「ドリンクだよ、ドリンク。俺としてはあれが一番助かってんだよな」

「…ドリンク?」

「そうだよ」



青峰先輩の言葉には、思い当たることがあった。
入部したばかりのときに、赤司先輩からマネージャーの仕事について説明されたときのことだ。
ドリンクを一番に、部員が口に含む可能性があるものの管理は必ず下級生がするようにと指示されていた。
やけに強い口調で言われたものだから、今もこうしてはっきりと思い出せるのかもしれない。
あのときの赤司先輩の言葉と、今の青峰先輩の発言によって、その理由はなんとなく察することができた。
ただ、それに触れてはいけないような気がして、改めて別の話題を探す。



「あ…実は私も、青峰先輩のことは桃井先輩から色々と聞いてたんです」

「…チッ、あいつは本当に口の軽い奴だな」

「え、あ、あの…ええと、私が知りたいって言ったからで…桃井先輩が自分から話したわけじゃないです」

「ふーん…そうか」

「青峰先輩、どんな人なのかなって思って…部活中は全然話せないし…」

「…確かに、けっこう近くにいるのにマネージャーとはあんまり話すことねえな」

「…そうですよね」






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