さつきって誰のことだろう…なんて、一瞬だけ考えてしまったけれど、すぐに桃井先輩のことだと気付く。
いつも名字で呼んでいるせいか、咄嗟に名前が出てこなかった。
桃井先輩の顔が頭に浮かんだと同時に、青峰先輩と桃井先輩が幼馴染みの間柄であることを思い出した。
それならば、名前を知っていることにも幾分か納得できる。



「そうだったんですか…あの、間宮純奈です」

「間宮か。…でも、やっぱ純奈って感じだわ」

「何がですか…?」

「何って…お前の雰囲気?」



なぜか聞き返されてしまい、ふと愛想笑いのような笑みを浮かべた。

二人で管理室から出ていく。
辺りはすっかり暗くなっていて、昇降口まで来たところで青峰先輩が思いついたように口を開いた。



「せっかくだし、途中まで一緒に帰るか」

「え、いいんですか?」

「だって、お前…ここで別々に帰る方が気まずくねーか?」

「そ、そうですね…はい、帰ります」

「変な奴だな。あ、だけどコンビニ寄るぜ。アイス食いてえし」

「はい」



本当に自由な人なんだな…そんなことを思いながら、青峰先輩を見つめる。

偶然とはいえ、青峰先輩と一緒に帰ることになるとは。
マネージャーに対しては、特になんとも思っていないものだと思い込んでいただけに衝撃だった。
今こうして話している青峰先輩は、とても面倒見のいい人のように思える。
先輩によくある、妙な威圧感を放ってくるような人ではなくて、少しばかり安心した。






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