「青峰先輩、お疲れ様です」

「おう…って、俺の名前知ってんのか」

「も、もちろんです、バスケ部だから…」

「ふーん…」



青峰先輩も鍵を返しにきたようだ。
部室の施錠を任されたのだろうか、指先に引っかけていた鍵を戻しながら意味深に頷いている。
それにしても、こんなところで青峰先輩を目にするとは思わなかった。
少し意外だ。
一瞬の間が空いてから、青峰先輩がこちらに目を向けてきた。



「俺もお前の名前、知ってるけどな」

「…そうなんですか?」

「純奈だろ」

「え…え?」



適当に言われるだろうと思っていたものだから、正解を言い当てられて動揺してしまう。
私が青峰先輩の名前を知っていることには、何の疑問もない。
だって、青峰先輩はバスケ部ではエースということもあって、超がつくほど有名な人だ。
バスケ部に在籍しながら、青峰先輩を知らないなんてそれこそありえない。
しかし、青峰先輩が私のことを知っているのは異常だ。
とても名前を覚えてもらえるようなことをした覚えはない。
ただ、青峰先輩の口から出てきた自分の名前は、どこか呼び慣れているように聞こえた。



「名前、知ってたんですか」

「ああ、さつきから聞いて」






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