「ね、純奈ちん、今度はポテチがいいな〜」
「…え」
「ん?」
「名前、知ってたんですか?」
「あ〜…ごめ〜ん、名前はさっき赤ちんから教えてもらったんだー」
「赤司先輩ですか…?」
「うん。マネージャーの名前もちゃんと覚えてるとか、すごいよねー」
「…それは、すごいですけど…」
思わず、言葉に詰まってしまう。
今は何より紫原先輩の名前の呼び方の方が気になって、仕方なかった。
第一、まともに話したのなんてこれが初めてなのだから。
相当に変な顔をしていたのだろうか、紫原先輩に訝しげな目で見つめられる。
「どしたの〜?」
「…あの、名前」
「え。純奈ちん、いいと思うんだけどな…ダメ?」
「い、いえ…仲良くなれた感じがして、嬉しいです」
「そう?だったらいいよね〜」
「はい…じゃあ、私はそろそろ帰りますね」
「うん。かなり暗くなってきたから、気を付けてねー」
特に表情のない顔で、ひらひらと手を振られる。
こんな紫原先輩は初めて見たから、調子が狂ってしまいそうだ。
挨拶をして、更衣室に戻っていく。
よく分からないやりとりだったけれど、嬉しくて仕方ない。
その日から、部活の最中はポケットに何かを入れておくことにしていた。
たまに紫原先輩がこっそり声をかけてくれるようになったからだ。
話しかけられると、お決まりのようにお菓子を持っていないか確認をされる。
けれど、多くいるマネージャーの中から自分を認識してくれることは、ただただ嬉しかった。
並木さん、リクエストありがとうございましたback →