「ちょっとさー、聞いてほしいんだけど…いい?」
「なんですか…?」
「マネージャーって、バスケ部員のサポートしてくれるんだよね〜?」
「…そ、そうですね。私にもできるようなことなら」
「じゃあさ〜、お菓子とか持ってない?」
「お菓子…?」
「持ってきたお菓子、もうなくなっちゃってー。赤ちんが終わるの、まだかかりそうだからさ〜…お腹減っておかしくなりそう…」
お菓子を求められるなんて思いもしなかったから、ただただ困惑してしまった。
言い方はどうあれ、紫原先輩の瞳は間違いなく本気だ。
お菓子といえば、美里香と食べている途中だったお菓子が鞄の中にあったことを思い出す。
開封済みのものでも大丈夫だろうか、そう思いながら、どこか沈んでいる紫原先輩に声をかけた。
「袋は開けちゃったんですけど、戻ればあるから…それでも大丈夫だったら持ってきましょうか?」
「超ほしい!」
「じゃあ、とってきますね」
「ありがとー…あ、だけど赤ちんに見付かるとなんか言われるかもしんないから、こっそりね」
「…はい」
嬉しそうに笑っている。
にこにこしている紫原先輩は、先輩であるはずなのになぜかとても幼く見えた。
部活の練習中の真剣な表情しか知らなかったから、拍子抜けしてしまう。
紫原先輩はあんな風に笑ったりするんだ、新たな発見に戸惑いながら、薄暗い廊下を足早に歩いていった。
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