自室のベッドに横になって、今日の出来事を思い出す。

いつまでも帰り道で交わした会話が頭から離れなかった。
黄瀬先輩と紫原先輩の三人で帰ったときのことだ。





「美里香ちんと黄瀬ちんは、純奈ちんと話したのー?」

「え…あ、うん…話したといえば話したんスけど」

「せっかくちょっとだけお菓子残しておいたのに〜…会えなかったから、あげらんなかったんだよね」

「…」

「…」



返答しにくい会話を持ち出されたからか、黄瀬先輩が口元に苦笑いを浮かべている。
けれど、紫原先輩は何食わぬ顔で首を傾げた。
交互に顔を見比べられてしまう。


分かっていながらこんなことを言い出したのかと邪推してしまったけれど、本当に分かっていないような気がした。
純奈の病室を出たところに赤司先輩と紫原先輩がいたはずだ。
そういえば、病室を出たときに黄瀬先輩が赤司先輩に何か言っていた。
考えるまでもなく、純奈のことを話していたのだろう。
しかし、だとしても、紫原先輩が話の内容に全く興味を抱いておらず、聞いていなかったことすら容易に想像ができた。

黄瀬先輩も紫原先輩が分からずに言っていることを承知しているのか、あえて何も言い出さない。
そうしていると、紫原先輩が何か言いたそうな目でこちらを見ていることに気付いた。
それが気になってしまい、声をかける。



「…なんですか?」

「え〜…何が?」

「何か言いたそうな顔してましたよ」

「…んじゃー聞いてみよっかな…美里香ちんって純奈ちんと喧嘩してんの?」

「え…喧嘩?」

「うん。ちょっと気になっただけだけど〜」



隣で会話を聞いている黄瀬先輩が複雑そうな表情をしている。

紫原先輩とはあまり込み入った話をすることがなかったから、純奈についてどんなことを考えているのか知らなかった。
しかし、紫原先輩はもしかすると何も知らないのかもしれない。
何から何まで、だ。
知らないというより、どんなことが起こっていようとさして興味がないという方が正しい。
他人に干渉することもされることも好んでいない紫原先輩だからこそ、そういう可能性も十分にありえると思った。

なんと返事をするべきか少し考えたけれど、首を左右に振る。






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