「…間宮さん、笑わなくなりましたよね」



今日二度目の病院から駅までの帰り道の途中、黒子がぽつりと呟いた。
その言葉を聞いて、赤司は黒子に目線を向ける。
しかし、すぐに顔を前方に向き直して、何かを思案するように黙り込んだ。
二人の間に僅かな沈黙が流れて、やがて考えがまとまったのか赤司が話を切り出した。



「笑わなくなったというのは、いつからなんだ」

「具体的な時期は分からないんですが、こうなるまでは…もっと笑ってたような気がするんです」

「…分からないな」

「分からない…?」

「思い返してみると…こうなるまで、僕は純奈とあまり話したことがなかった」

「…そうだったんですか。てっきり僕は、前々から知り合いなのかと思ってました」

「そういうわけではないな」



赤司が返事をしたきり、会話が途絶える。
辺りはだんだんと薄暗くなってきていて、人通りも少なくなっていた。
正面を向いたまま、赤司が静かに口を開く。



「黒子は純奈とよく話していたんだな」

「頻繁に話すわけではなかったんですが…確かに、他のバスケ部のみんなと比べたら話す機会は多かったかもしれません」

「そうだったのか」

「多分ですけど、話しかけやすいんだと思います」

「…なるほど…つくづく、色々なことに気付かされるな」

「…何のことでしょうか…?」

「…個人的な話だ」



自己完結したのか、赤司は納得したように何度か小さく頷いた。
赤司の思考のペースに一向についていけない黒子は諦めたように口を閉ざす。
それから再び視線を前方に戻して、息を吐いた。


今日は本当に長い一日だった。
やはり、赤司くんの影響力は想像以上に大きい。
きっと見咲さんも赤司くんさえ間宮さんの傍にいれば、危害を加えるような行動をとることもないだろう。
今度こそ、そう信じたかった。
しかし、間宮さんがバスケ部に戻ってきたときのことを考えると不安になってしまう。
状況が好転するどころか、黄瀬くんや緑間くんとの誤解さえ解けていないのだから。
















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