黒子はしたいことを全てしたのか、戸のところで待っていた赤司の元に戻っていった。
帰り際、赤司は純奈に背を向けたまま呟く。



「次に会うのは学校で、だな」

「…そうですね」

「せっかく連絡先も分かるので、退院の日が分かったら僕たちに教えてくださいね」

「は、はい」



久しぶりに、本当に自分でも動揺してしまうほど久しぶりに笑顔を浮かべられたような気がした。
今のは愛想笑いではない、本心からの笑顔だったと思う。
けれど、すぐに顔を伏せた。


以前のように、笑いたい。
一瞬でも暗い現実を忘れ去ってしまえたらいいのに、どうしても気持ちを切り替えることができなかった。
いつまでも忘れられないなんて、このままでは知らず知らずのうちに笑い方さえ分からなくなってしまいそうだ。
こんな陰気な顔ばかりしていても、どうしようもないのに。










それから、赤司と黒子は帰っていった。
純奈は戸が完全に閉まるまで二人の姿を見送る。


相変わらず晴れ晴れとした気持ちにはなれなかったけれど、嬉しかった。
自分を心配してくれている人がまだ二人もいるのだから、簡単に絶望できない。
学校に行くことも諦めたくない。
そして、バスケ部を辞めることはできない。
好奇の視線を浴びて、どれだけ辛くなったとしても堪えるしかないのだ。
何より、自分の話に耳を傾けてくれる人がいないと塞いでいたときとは違う。

今日は色々あったけれど、赤司先輩と黒子先輩と話をして、覚悟ができた。
後ろ向きなことばかり考えたり、辛くて泣いてしまうようなことがあると思うけれど、それでも学校には行ってみよう。

学校には、バスケ部には、赤司先輩と黒子先輩がいるのだから。
















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