無言のまま、駅に着いた。
ここから帰る道はそれぞれ別方向で、そろそろ解散という空気が流れる。
黒子は赤司に話しかけるタイミングを見計らうように目を向けていた。
それでもやはり沈黙が続いている。
とても自ら話を切り出せる気分ではないのだろうことを察したのか、赤司が腕を組んだまま呟いた。
「今日はこれで解散だ」
赤司が話を切り出してくれて少しばかり安心したのか、緊迫していた空気が徐々に緩んでいく。
少ししてから緑間が眼鏡を指先で押し上げながら口を開いた。
「…今日はおは朝の占いも最下位だったし、ラッキーアイテムの効力だけではカバーできないほどの一日だったのだよ」
「もうそういう次元の問題じゃなかったような気がするんスけど…」
「ふん…とにかく俺は先に帰らせてもらう。じゃあな」
今日の一件でよほど考えることがあったのか、緑間は背を向けて、さっさと改札口の方に向かっていってしまった。
全員の異常なまでの口数の少なさから、今日は早々に解散した方がいいのかもしれない。
緑間がいなくなってから、次は青峰がその場で大きく伸びをしながら呟いた。
「もうしないといけないことはねえんだよな…俺も帰る」
「え!?青峰くん、帰るの!?」
「それじゃーな」
「ちょ、ちょっと…もう、待ってよ!」
一人で勝手に話を進めて、面倒そうに歩いていく青峰を桃井が追いかけた。
少し走ったところで桃井は思い出したように振り返り、名残惜しそうな視線を向ける。
その視線がなんだか自分に向けられていたような気がして、黒子は小さく頭を下げた。
すると、桃井は小さく笑って全員に手を振り、また青峰を追いかけていく。
一瞬にして人が減ったような気がした。
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