「…赤司たちが来るのを待つのだよ」



黒子と桃井を除いた四人が一足先に待合室に着いたとき、緑間が静かに切り出した。
純奈の病室を出てから空気が重々しい。
しかし人もいるため、いつまでも立ち止まっているわけにもいかず、美里香は待合室の空いている椅子に腰を下ろした。
先程から抜け殻のようになっている美里香のことが気になったのか、黄瀬がその隣に座り込む。


純奈があんなことを言うなんて、考えてなかった。
あたしを嫌っているということは考えなくてもよく分かる。
手を跳ね除けられたことも、酷い言葉を投げつけられることも全て想定して純奈に言ったのだから。
でも、まさか黄瀬先輩たちも括った上で大嫌いと言い放ってしまうなんて。

あのとき、純奈と先輩たちとの間に今まで以上に大きな亀裂が入ったのを意識的に感じてしまった。
硝子が粉々に砕け散るような、紙を真二つに引き裂いたような、嫌な音を心のどこかで聞いてしまったのだ。
いくらなんでもあの状況であんなことを言ったら、おしまいだろう。
本当のところ、純奈に酷い言葉を投げつけられた時点であたしの想定は終わっていた。

純奈の本心が分かるだけに、こればかりはさすがに同情してしまう。


隣に座っている黄瀬の表情を窺いながら、美里香は声をかけた。



「…ごめんなさい…あたしのせいで黄瀬先輩たちにまで、嫌な思いさせて…」

「え…!?あ、ちょっとだけびっくりしたけど…全然、大丈夫っスよ」

「…」



黄瀬先輩は懸命に笑いかけてくれたけれど、これ以上は何も言わない方がいいような気がした。
会話が終わると互いに押し黙り、床に目を伏せる。


今までどんなことがあっても感情的な態度を見せなかった純奈だ。
だからこそ純奈の拒絶の言葉は、きっとそれなりに先輩たちにも効いただろう。
今日は想像以上に酷い展開になってしまい、とにかく呆気にとられてしまった。

何より解決しにくい方法でとんでもない誤解を招いてしまったのだ。
もう元通りの関係に戻ることはほとんど不可能ではないだろうか。

そんなことばかり考えてしまう。
















×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -