病室を出たところには赤司と紫原が立っていた。
どうやら、黒子と桃井が出てくるのを待っていたようだ。

もっと早く来てほしかった…その一心で黒子は赤司に目を向ける。
過ぎてしまったことはどうしようもないかもしれないが、とんでもないことになってしまったのだ。
先に出た黄瀬たちから多少なり話は聞いているのか、赤司は神妙な顔をしている。

少しだけ沈黙が流れてから、赤司は二人に声をかけた。



「…帰るぞ」



赤司の切り出した言葉に、表には出さなかったけれど黒子は動揺してしまった。

不自然な行動をとることがどれだけ危険か分かっている。
それでも、あの誤解をそのまま放置しておくことはいけないような気がした。

ちらりと横目で紫原と桃井の様子を窺う。
この二人ならば、言い方にさえ気を付ければ余計な詮索をされずに済むかもしれない。
そう判断して黒子は赤司に声をかけた。



「帰ってもいいんですか?」

「純奈は面会謝絶ということなんだろう」

「…そういうわけではないと思いますが…」

「…黄瀬たちから聞いただけでも、今はとても話せそうな様子ではないみたいだからな」

「…」

「黒子、出直そう。だから今は諦めろ」

「…はい」



赤司に諭されるような口調で言われてしまい、黒子は頷くしかなかった。


赤司くんと紫原くんは一体いつからここにいたのだろうか。
ふとそんなことを考える。
部屋に入る前に異様な空気を感じ取って、あえて入らずにいたのだろうか。

確かめるように紫原くんにもう一度だけ探るように目を向けるけれど、いつもと大して変わらない様子だ。
そうしていると視線が重なってしまい、紫原くんは不思議そうな顔のまま口を開いた。






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