「あの、皆さん…」

「黒子は黙っていろ」

「でも…」

「…さすがに見咲が気の毒なのだよ」

「…」



緑間の瞳に映っている微かな怒りを見てしまい、黒子は言葉に詰まる。
とても穏やかに話を進められる空気ではない。
青峰と桃井は一向に口を開かないけれど、表情を窺えば大体どのようなことを考えているかは分かった。

美里香に対してあんな無碍な扱いをする純奈を理解できない。
全員がそう言いたげな顔だった。
純奈が美里香を拒絶するばかりか、あんな感情的な言葉を投げつけるなんて本来ならばありえないことなのだ。
美里香が純奈のお見舞いに行こうと言い出したときのことを知っているから、尚更。


すぐに予想できた黒子がはっと純奈の方に顔を向ける。
しかし、純奈は全く変わらない体勢のまま少しも動かない。

このままでは埒が明かないと悟ったのか、青峰が深く息を吐いて小さい声で呟いた。



「…あのな…美里香はお前のために、お前の入院先まで行こうって言い出したんだぞ」

「そ、そうだよ、純奈ちゃんのために…美里香ちゃんがせっかく言ってくれたのに、そんなこと言ったら…」

「…」



青峰と桃井の言葉にも反応を示さない。
二人の声すら聞きたくないのか、純奈は苦しそうに目を閉じている。
一触即発という状況下で、一体いつになれば自分に声をかけられる瞬間が訪れるのか、黒子は気が気でなかった。

ずっと純奈を睨んでいた黄瀬が思い出したようにはっと美里香に顔を向ける。
美里香も純奈と同様に動かず、固まっていた。
跳ね除けられた手が行き場を失くしている。

美里香は下を向いたまま、静かに口を開いた。



「…純奈…なんでそんなこと言うの?」

「…」

「せっかく先輩たちも来てくれたのに…酷いんじゃないの…?」

「美里香…本当に、やめて…」

「純奈…」



そこまで言ったところで、ふいと純奈に背を向ける美里香。
純奈は美里香に言葉を返したきり、また黙り込んでしまう。






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