「…いってきます」



どんなに拒んでも朝はやってくる。
用意した退部届けを鞄の中にしまい、学校へ向かった。

学校を休むわけにはいかない。
とてもじゃないけれど家族に今の学校での現状を話すことはできなかった。
学校でありもしない妙な噂を流されて、学校中の生徒たちから白い目で見られているなんて、一体どうやって説明すればいいのか分からない。
今、そんな話をしたところでまともに聞いてもらえるのか。家族にまで信じてもらえないのではないかと思うと怖くて話すことができなかった。


あらゆる思いを胸に抱きながら、重い足取りで通学路を歩いていく。

部活のときも辛いけれど登校のときが苦痛で仕方ない。
自分で分かっている以外にもたくさんの噂が流れているのだろう。
周囲の冷たい視線が堪らなく怖かった。

こういうときに限って、耳が敏感になっているのか陰口があちらこちらから聞こえてくる。



「あの人だよね?バスケ部でキセキの人たち狙ってマネージャーやってる人って」

「うっざー…マジ腹立つんだけど。そんなのマネージャーにしておくとかどうかしてるし」



バスケ部のマネージャーをしているというだけで学校中の女子からバッシングを受けるようになったのはいつからだろう。
特に今のバスケ部の三年生のレギュラーはキセキの世代と呼ばれる人たちで、女子たちの注目の的であることが余計に事態をややこしくしている。

もちろん、同じバスケ部のマネージャーであっても桃井先輩や美里香のことをあれこれ言う女子はあまりいない。
私がマネージャーであることがみんなは気に喰わないのだ。
あらゆる面で不釣り合いなのだろう。
そんなことは人に言われなくても分かっているつもりだった。


私はそんなやましい気持ちでバスケ部の先輩たちと一緒にいたわけじゃないのに…。


一秒でも早くこの場から立ち去りたくて、早歩きで学校への道を急ぐ。
けれど、立ち去る前にとんでもない会話を耳にしてしまった。






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