「…」



あれから、赤司は総合受付の最後尾に並んでいた。
受付には老人の面会希望者がいて、耳が遠いのか担当者にしきりに質問している光景が目に映る。
そのせいか、なかなか列が進まない。
仕方ないと思いながら、自分の順番が来るのを静かに待つ。

そのとき、後ろから気の抜けた声が聞こえてきた。



「なかなか動かないね〜」

「…紫原」

「ん?」

「どうしてここにいるんだ」

「どうしてって〜…」



紫原は買ったばかりと思われる新しいお菓子を片手に持って、きょろきょろと辺りを見回している。
あえて聞いてはみたものの、事の顛末が読めているのか赤司は呆れた表情で尋ねた。
うーん…と紫原は小さく唸る。



「あっちの売店でお菓子とか買ってたら、いつの間にかみんないなくなっちゃっててー」

「…」

「ほんとごめん〜。でも、病室の場所なんか分かんないから赤ちんと一緒に行こうと思ったんだけど〜…ダメ?」

「…分かった。ただ、少し待つことになるぞ」

「うん、いいよ〜」



待ち時間があるとはいえ、お菓子があるからか紫原は快く返事をした。
すぐさま持っていた飴の袋を開けて口の中に入れる。
一つ食べる?と袋から一つとって差し出したけれど、赤司は無言のまま首を横に振った。











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