緑間と別れてから、美里香は購買部の方に歩いていく。
そこで今度は並んでいる商品の前でぼんやりと突っ立っている青峰を見付けた。
その近くに桃井の姿は見当たらない。
学校にいる間、ずっと一緒にいるわけないと分かってはいたけれど、部活や部活帰りの印象が強かったから反射的に探してしまった。
しかし、一人で神妙な目付きで商品を睨みつけている青峰を見て、声をかけるべきかかけないべきか迷ってしまう。

美里香が様子を窺っていると、気配を感知したのか青峰が美里香の方に顔を向けた。
その勘のよさに戸惑ってしまうけれど、青峰はこっちに来いと言わんばかりに手招きをしている。
何かあったのだろうかと美里香が青峰に近付いていくと、唐突に目の前にパンの袋を差し出された。



「…これはなんですか?」

「ちょうどいいところに来たな…美里香、わりーんだけどちょっと金貸してくれ」

「お金、忘れたんですか?」

「教室から財布持ってくるの忘れたんだよ。ここ一階だし、教室まで戻るのもだりーし」



そういうことなら…そう思いながら、美里香は持ってきていた小銭入れの中を覗く。
青峰が持っているパンは買えそうなくらい持っていたから、その分のお金を手渡した。
サンキュー!と満面の笑みを浮かべてお金を受け取り、青峰はさっさと会計に向かっていく。

それから程なくして会計から戻ってきた青峰に笑いかけた。



「お返しはアイスがいいな」

「あーなんでもいいぜ」

「帰り道にあるお店のジェラート、美味しいんですよね」

「なっ!あそこの店のっていったらこのパンの何倍の値段すんのか知ってんのか…!?」

「ダメですか?」

「…それがよけりゃ、それでいいんじゃねーの」

「冗談です」



青峰先輩は、なんだかんだで文句を言いながらも優しく接してくれる先輩だと思う。
青峰先輩のことをよく知らない友達は、かっこいいけど怖そうだの不良みたいだの勝手なイメージを口々に言っているけれど、そんなことない。
確かに学業的には不真面目なところがあるだろう。
でも、何も考えていないというわけではないはずだ。
青峰先輩は話していて気が楽になるのか、こんな冗談を口にすることまでできる。
もしかしたら、こんなことを言えるのは青峰先輩だけかもしれない。











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