正直もっと重い相談をされると身構えていたせいか、美里香の言ったことに思わず拍子抜けしてしまった。
それにしても意外なことを言い出されて黄瀬はただ目を丸くする。
色々と酷いことをされていても未だに純奈のことを気にかけている美里香に純奈は何も言えなかった。
そして同時に、こんな風に考えてくれている友達がいるのに、どうして純奈は好意を踏みにじるようなことをしてしまうのかと思ってしまう。
いつまでも無言のままでいる黄瀬を見て、美里香が小さい声で呟いた。
「純奈も一人で寂しいと思うから、行こうかなって思ったんですけど…やっぱりダメですか?」
「え!あ、ええと…そうっスね…もちろん俺はいいんスけど、他のみんながなんて言うか…」
「そっか…みんなにもちゃんと聞かないとダメ、ですよね」
「…俺からみんなに聞いておくっスよ!美里香ちゃんはもうあんまり気にしないで!」
これ以上、美里香に純奈のことで暗い気持ちになってほしくなくて、その一心で黄瀬が笑いかける。
美里香は一瞬だけ目を丸くしたけれど、すぐに黄瀬の気遣いを察したのか小さく頭を下げた。
「ありがとうございます…黄瀬先輩に一番に話して、本当によかった」
「…うん、もっと俺のこと、頼っていいんだから。美里香ちゃんはいつも一人で頑張りすぎなんスよ」
「…はい」
笑いかけると美里香も元気を取り戻したようで、黄瀬は安堵の息を吐いた。
いつも部活のみんなのことを気にかけていて笑っている美里香ちゃんの元気のない様子を見てしまうと、なんともいえない気持ちになってしまう。
美里香ちゃんが自分を頼りにしてくれるならば、どうにかして支えてあげたい。
それに、自分が伝えることくらいなんということはなかった。
「それじゃ、部活に行こう!」
「はいっ」
先に歩き出した黄瀬の少し後ろを美里香がついていく。
その美里香の口元には、どこか不敵な笑みが浮かんでいた。
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