…美里香ちゃんも、こういう風に積極的に寄ってくるタイプの女の子だと思ってたんだけどな…。


そこまで考えたところではっと我に返った。
どうして突然そんなことを思ってしまったのかと動揺したけれど、すぐに自分のいる輪から少し離れたところに美里香がいることに気付く。
人通りが多い通学路の中でもその姿をすぐに見付けることができた。


美里香は一人で学校に来ていたようで、ちょうど黄瀬に視線を向けたところで視線が重なる。
意外な出会いに驚きながら黄瀬は美里香に挨拶をしようとしたけれど、美里香に困ったような笑顔を返された。
その笑顔がどんなことを意味しているのか分からない。
ただ、そんな反応をされるとは思わなくて、黄瀬は上げかけた手を静かに元の位置に戻した。

美里香は軽く頭を下げて、足早に学校の方に歩いていく。
その後ろ姿を黄瀬はぼんやりと見つめていた。




















「黄瀬くん、部活頑張ってね!」

「ばいばーい」



一日の授業が全て終わり、放課後になる。

今日は朝から休み時間、現在に至るまで女子たちにひっきりなしに声をかけられていた。
それでも黄瀬は疲れた様子を表に出すこともなく、愛想よく笑顔を返している。
横目でクラスメイトである紫原の姿を探すけれど、もう部活に行ってしまったのか姿が見えない。

女子たちに帰りの挨拶をしてから黄瀬は教室を後にする。
今日はいつもに比べてガードが固かったな…なんてことを思いながら、軽い足取りで廊下を歩いていった。


昨日の出来事があったからか、美里香ちゃんのことを思い出してしまう。
今朝はせっかく会えたのに一言も話すことができなかった。
よく思い返せば、部活の合間の時間くらいしか美里香ちゃんと話すときなんてなかったような気がする。

昨日は本当に運がよかった。
いつも隙がなく、落ち着いた雰囲気を身にまとっているような美里香ちゃんだからこそあのギャップが気になってしまう。

美里香ちゃんは、キセキの中でも自分に対しては特に親しみを込めて話しかけてきてくれていると思っていた。
黒子っちに『見咲さんは黄瀬くんには肩の力を抜いて話しかけてますよね』なんて言われたことがあるほどだから、これは間違いない。
でも、部活中は何かと気にかけて声をかけてきてくれるのに、校内ではそれがほとんどない。
今朝もそうだ。
自分の周囲に女の子たちがたくさんいたから声をかけられなかったのかな?
そんなことを考えてしまうけれど、そういうことを気にするようなイメージが今まであまりなかったせいか、それも不思議だった。










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