マネージャーの仕事が全て片付いた頃、辺りはすっかり暗くなっていた。
美里香はやれやれと息を吐く。

今日はどうしても一人になりたくて、桃井先輩に無理を言って洗濯まで一人で片付けていたものだから、さすがに疲れた。
とんでもない量の洗濯物の山を目にしたときはこんなものを一人で片付けるなんて無理だと思ったけれど、やればできるものだ。

何より今日は部活中にイライラしてしまったから、精神的に余計な疲労がのしかかっているような気がする。
せっかく純奈がいなくて快適な毎日を送っているというのに、こんな風にイライラしていてはいけない。
自分自身に言い聞かせながら美里香は女子更衣室から出ていった。



出入り口に繋がる通路を一人で歩いていく。
蛍光灯の光でぼんやりと照らされているけれど、どことな気味が悪い。

早くこんなところから出たかった。
コツコツと乾いた足音が響く。
そのとき、何かに気付いて美里香はふと足を止めた。



「…?」



聞こえてくる足音が、重なっているような気がする。
自分の足音と、もう一つ別に誰かの足音が聞こえた。
まるで自分の歩調に合わせてついてきているような…そこまで考えたところで、美里香の口元が強ばる。

…誰かついてきてる?
体育館の方も暗くなってたから、今日はもうみんな帰ってるはずなのに…。

どうするべきか冷静に考える。
いつまでもこんな不気味な空気にびくびくしていたくない。

思いきって、振り返った。
蛍光灯の光に照らされていない方の暗闇の中から黒い影がこちらに向かってくるのが見える。
まだ暗い場所に目が慣れていなかったから、相手が何者なのか分からなくて美里香は目を見開いた。



「きゃあっ!?」



いきなり人が現れて、しかもこちらに向かってきているから思わず大きい声を上げてしまった。
しかし黒い影が光のある方にやってきたとき、その姿がはっきりと見える。
黄瀬先輩だ。






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