色々あったけれど、ようやく体育準備室に戻ってきた。
ここまで戻ってくるためにかなりの時間を費やしたような気がする。

辺りに人がいないことを念入りに確認して、戸を完全に閉めてから美里香は険しい表情のまま目の前の空間をじっと睨みつけた。
その瞳からは先ほどまでの光が消えている。

無言のまま流し台の前まで歩いていくと、持っていた空の給水器を思いきり叩きつけた。
ガン!と大きな衝撃音が室内に響き渡る。
しかし、美里香の表情は変わらない。
やがて小さな舌打ちをした。


…本当…今日は最悪な一日だった。
こんな厄日になるなんて思わなかった。

紫原先輩に、最後の最後で赤司先輩…こんな気分になるのも全部純奈のせいだ。
どうしてあたしがキセキの先輩たちにここまでイラつかされないといけないの?
今日のあたし、そんなにおかしかった?


本当に純奈には腹が立つ。
紫原先輩にこっそりお菓子をあげてたなんて…そんな餌付けみたいなことをしたら、懐いてくるに決まってるじゃない。
もしかして、純奈は紫原先輩が懐いてくることまで想定した上でそういうことをしてたの?
…これはさすがに深読みのしすぎかもしれない。
あの純奈がそんな先のことまで考えているなんて、それこそありえないことだ。


今日一日で蓄積された苛立ちをどうしても抑えきることができなくて、動作の一つ一つが荒くなってしまう。
もちろん誰もいないからできることだったけれど、純奈を意識してしまうとどうしようもなかった。

しかし、脳内で考えが進んでいくうちに美里香はあることを思い出す。
赤司のことだ。
赤司だけは無視していくことができそうにない、そのことは美里香もよく分かっていた。


確かに紫原先輩が純奈の話題を振ってきたときは頭に来たけれど、それ以上に考えないといけないのは赤司先輩だ。
紫原先輩に腹を立てている場合ではない。

あの人が誰より厄介なのに…逆らったり、少しでも気に喰わないことをしたらあたしが退部をさせられかねない。
あたしはもちろんだけど、他のキセキの先輩たちだって赤司先輩には強く言えないのに。

こうなってしまった以上、あたしが手を下すことはできない。
もともと自分の手を使う気はなかった。
とにかく、純奈の方から退部させなければいけないのだ。
純奈さえいなければ、もうバスケ部のことで気を揉む必要なんてなくなるのだから。
赤司先輩なんて、もはや当てにならないだろう。
今は何がなんでも妙な行動を起こすことは控えて大人しくしていないと、あたしが窮地に立たされてしまいそうな気がした。


…赤司先輩、本当に苦手。
頭いい人っていうのは分かってたけど。






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