そうこうしているうちに休憩の時間が終わって、練習が再開された。

美里香はいそいそと空になった給水器を片付ける作業に入る。
まだ中身が残っている給水器はそのままにしておいて、空いているものを探しては体育準備室に持っていった。

二軍と三軍のところも同じように片付けていく。
やがて、置いたままにしておいた給水器の回収をしようと第一体育館に戻ってきた。
そのとき、赤司が美里香を呼び止める。



「美里香、少しいいか」

「赤司先輩?」



意外な人物に呼び止められたからか、美里香は不思議そうな顔をして振り返る。
軽くなった給水器を片手に持ったまま、赤司の方に体を向けた。
赤司は腕を組んで、美里香の顔をじっと見つめている。
いつもと何も変わらない。
けれど、それがいつもと同じようで違うように感じた美里香は、訝しげに赤司に目を見つめ返す。
すると、赤司が口を開いた。



「…ついさっき桃井には話したんだが、来週くらいから純奈が退院して部活に戻ってくるから、覚えておいてくれ」

「…え?」

「一人だとマネージャーの仕事も大変だろう?」

「…」



赤司は口元に笑みを浮かべて、意味深に呟いた。
美里香は表情を変えないまま赤司の目を見据える。


…なんなの?
あたしに何を言いたいわけ?
前から思ってたけど、赤司先輩…純奈と仲良いの?
でも…そもそも、根本的にあたしは何もしてないんだから、知りようがないはず。

…純奈が話をする以外は。


嫌な予感がした。
赤司先輩を相手に感情的な言動をとるようなことは何にしても逆効果になりかねない。
赤司先輩の頭の良さはよく分かっていた。それに伴う行動力が十分に備わっていることも知っている。
だからこそ、下手なことは絶対にできない。
この人だけは敵に回してはいけないのだ。

思うことは多くあったけれど、美里香は下を向いて小さく笑みを浮かべた。






×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -