「いきなり一対一とかー…てゆーか、なんで俺なの?」

「そりゃ、お前…ディフェンスといえば紫原だろうがよ」

「何それ」

「いいだろ。一対一なんて黄瀬としかあんまりやらないから楽しいんだよ」

「…黄瀬ちん、変わってくんないかなぁ〜」



ぶつぶつぼやいている紫原先輩のことを気に留めずに話を続ける青峰先輩。


やっぱり違和感があった。
何かあったのだろうかと美里香は表情を崩さないまま考える。
でも、これは至って普通のことだ。
個々の練習メニューをこなしているときなんて一人で練習していることが当たり前だから、こんなことは。


二人にタオルを手渡してから黒子先輩を探す。
桃井先輩が近くにいたからかすぐに見付けられた。
どうやら一人で基礎練習をしていたようだけれど、なんとなく気になる。



「今日も黒ちんとパス練すると思ってたのにー」



自分が気になっていたことを紫原先輩が呟いた。
はっと振り返って自分も会話に加わろうと青峰先輩に声をかける。



「あたしも思いました。いつも青峰先輩って黒子先輩と練習してませんでしたか?」

「お前らな…別にいいだろーが。テツとしか練習しないわけじゃねーよ」

「…ふーん…ま、いいけど〜」

「…そうですね…ごめんなさい、青峰先輩」

「気にすんな」



そう言って青峰先輩は笑顔を見せてくれた。
これ以上、何かを言ったら青峰先輩の機嫌を損ねてしまいそうだったから早々に謝っておく。
本当に別になんでもなかったのかな?そう思ったけれど違和感は拭えないままだった。

休憩もそこそこに青峰先輩は立ち上がって、紫原先輩にまた一対一しような!と笑いかける。
紫原先輩は返事をすることなく面倒そうに冷ややか目で青峰先輩を見ていたけれど、それを全く気にすることなく自分の練習に戻っていった。
空になった紙コップを口に咥えながら紫原先輩が口を開く。



「ふっしぎ〜」

「…そうですよね」

「ん。美里香ちん、ドリンクおかわり」

「…はい、持ってきますね」



いつも思うけど…紫原先輩って、何考えてるの?
…よく分からない。
あたしの想像以上に何も考えてないのも。


思いを口にすることなく紙コップを受け取って給水器の方に走っていく。


ただ、やけに青峰先輩と黒子先輩のことが気になった。
あたしには何も関係がないこと、それなのに。





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