「桃井先輩!ドリンクの用意できました」

「え!?もうできたの!?美里香ちゃん、本当に早いよね…」



そのとき、美里香と桃井は二人で体育準備室で備品の用意をしていた。

純奈がいなくなってから部活でしないといけないことの量は目に見えて増えていた。
することが遅い純奈でも、いるのといないのとでは片付ける時間が大幅に違うような気がする。
それでも決して嫌ではなかった。
むしろ、清々しいほどだった。

桃井先輩にドリンクの管理は任せないでくれ、と前々から赤司先輩に言い伝えられていたから先にドリンクの用意をしておく。
それもなかなか手馴れたものであっという間に仕上がった。

仕事の速さに目を丸く桃井先輩に笑いかける。



「そんなことないですよ、これ、早くみんなのところに持っていきましょう」

「うん、タオルの用意もできたし…そろそろ休憩の時間になるから持っていこう!」

「はいっ」



純奈がいなくなって、部内でも純奈の話をする人もいなくなってきた。
純奈という存在がようやくバスケ部のみんなの中から薄れてきたような気がする。
怪我が酷くて入院をすることになったと聞いたときは少しばかり気の毒に思ったけれど、それでよかったのかもしれない。
あれ以上ここにいたら、今度は自分が何をするのか自分自身でも分からなかったから。

桃井先輩と体育準備室を出て、二人で体育館の方に向かっていく。
その途中でなんとなく桃井先輩のことが気になって話しかけた。



「黒子先輩に渡せるといいですね」

「も、もう…うん、テツくんと少し話せるといいな…」



正直なところ、黒子先輩なんて最初から恋愛対象として眼中にないからどうでもよかった。
だからこそこんな冗談めいたことを口に出せるのだと思う。
桃井先輩は黒子先輩のどこがいいんだろうか。
アイスの当たり棒をもらったことをきっかけに恋に落ちるなんて、自分自身に置き換えてみると全く想像がつかなかった。











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