翌日、朝のホームルームのとき。
生徒が階段から落ちて大怪我をしたから十分に気を付けるように、といった連絡を担任の先生がしていた。
すぐに間宮さんのことだと気付いたけれど、間宮さんの転落の理由が階段の上から足を踏み外したから、ということになっていることに息を呑んだ。

間宮さんは足を踏み外してなんか、いない。

我慢できなくて、部活に行く前に担任の先生を訪ねて間宮さんの入院先を教えてもらった。
行っても無駄だろうと言われたけれどそれでもどうしても行きたかった。
間宮さんと話がしたくて仕方なかった。


レギュラーということもあり、連日で部活を休むわけにもいかなくて体育館に向かっていく。
すでに間宮さんの話は部内の人たちに知れ渡っているようだった。



「純奈ちゃん、階段から落ちたんスよね…」

「…まあ、マネージャーの仕事ならさつきと美里香がいるから大丈夫だろ」

「ほら、もう切り替えて練習をするのだよ」



全員があからさまに気のない反応だった。
あんなに仲の良かった人をこんな風に忘れてしまえるなんて、悲しくなる。
昨日、自分の顔色が悪かったときはあれだけ心配の声をかけてくれていたはずなのに、どうしてこんなことになってしまったのだろうか。
こんなことにならなければ、何も起こっていなければ、みんなは絶対に間宮さんの心配をしていた。

どうしようもなくて、それでもどうすればいいのか分からなくて、ひたすら無心で練習に参加をした。
そして、部活帰りに行けそうなときは間宮さんの入院先を訪れていた。
いつまでも目を覚まさなくて本当に心配だった。


お願いだから、目を覚ましてほしい。
そう思ったとき、間宮さんの笑った顔が脳裏を掠めた。
仲の良かった頃によく見せてくれた、笑顔。
よく微笑みかけてくれていたはずなのに、忘れかけてしまっていた。

あんなに傍にあったはずなのに、知らないうちにこんなに遠くにいってしまっていたなんて。





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