ちょうどそのとき、別の体育館から戻ってきたのであろう桃井さんと見咲さんに鉢合わせる。
あれだけ対面することを拒んでいた見咲さんに出会ってしまい、思わず口元が強ばった。
何も言い出せずに二人に目を向けると、桃井さんが飛びついてくる。



「テツくん!今日は部活に来るの遅かったんだね!」

「桃井さん…」

「桃井先輩、ずっと黒子先輩のこと探してたんですよ」

「ちょ、ちょっと、美里香ちゃん…!」

「……」



目の前で楽しそうに笑い合っている。
桃井さんに無邪気な笑顔を見せている見咲さんをただ呆然と見つめていた。

あんなことがあってからまだ少しも時間が経っていないのに、こんなに楽しそうに、笑っている。

ありえない…ただそうとしか思えなかった。
見咲さんには罪悪感というものがないのだろうか。
そもそも突き落とした時点でそんなものは鼻からなかったのかもしれない。
踊り場で倒れていた間宮さんの姿を思い出して、ぐっと拳を握り締める。
そして、桃井さんの手をすり抜けて頭を下げた。



「…すみません、今日は体調が悪いので…先に帰らせてもらいます」

「え!?」

「そうなんですか?」

「はい…失礼します」

「あ…テツくん…」

「お大事に…」




見咲さんの顔を、直視できなかった。
返事もろくにしないまま二人に背中を向けて体育館から出ていく。


思い返せば、今朝から可笑しいと思うことがあった。

登校していたときも、間宮さんは見咲さんに話しかけようとしていた。
そのとき、邪険な対応をしていたのはおそらく間宮さんではなくて、見咲さんの方なのだ。
あらゆる符号が重なり合っていくような気がして、思わず息を吐く。


間宮さんと話がしたくなった。
そして謝りたかった。

今までなんてことをしてしまっていたのだろうか。
















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