「…黒子、この道は学校に繋がってるのか?」
「はい…え?」
「おはよう」
「…おはよう、ございます」
赤司の声が唐突に聞こえてきて、黒子はらしくもなく間抜けな声を上げた。
ゆっくりと振り返るとそこには赤司が立っている。
普段ならば人を驚かせてしまう立場は自分であるはずなのに、逆転している今の状況に黒子は言葉を失った。
一体いつからいたんだろう…そんな眼差しを向けられていることに気付いた赤司は可笑しそうにふっと笑って呟く。
「こういうことをされるのは初めてか?」
「あまりありませんね…」
「だろうな」
「…あの…なんで赤司くんがここに?」
「黒子が前の方を歩いていたのを見かけたからついてきただけだよ」
「そうなんですか、本当に気付きませんでした」
「この道は人が少なくていいな」
朝から人通りの少ないこの道を赤司くんも気に入ったようだ。
やっぱりこの道のことは知らなかったのか、そんなことを思って何も言わずに赤司くんの様子を横目で見ていた。
こうして赤司くんと二人で登校するなんて今までを思い返してみてもあまりなかったかもしれない。
そもそも時間が合わなかったし、通学路で偶然出会うということもなかった。
まさかこんな日に見付かるなんて珍しい。
赤司はひとしきり辺りを見回すと、思い出したかのように口を開く。
「昨日の夜、黒子にメールをしようと思ったんだけど送り忘れてね。早いうちにこうして会えてよかったよ」
「メール…何かあったんでしょうか」
「ああ、純奈のことだ」
「間宮さん?」
「自分のことや美里香のことは、話さないでくれと頼まれた」
赤司からの伝言に黒子は目を見開いた。
「…それはつまり…今までのように過ごせ、ということですか…?」
「色々と思うところはあるだろうが、な」
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