昼間の黒子との出来事を思い出しながら赤司は純奈の頭に手を置いていた。
しばらくして、純奈の涙が止まってから小さな声で呟く。
「…黒子が来たみたいだが…大丈夫だよ」
唐突に黒子の名前を出されて純奈ははっと顔を上げた。
まるで何から何まで知っているような口ぶりの赤司を驚きの眼差しで見つめている。
けれど、赤司は純奈の顔を見ることなく話を続けた。
「もう、純奈を傷付けるようなことはしないはずだ」
「…」
「…分かったな?」
「…」
赤司の言葉は純奈の心に重く響いた。
うつむいてしまい、それきり口を閉ざしてしまう。
やがて、辺りが暗くなってきた。
橙の空に薄暗い闇が入り混じっている。
風もだんだんと強くなってきて、そろそろ戻ろうか、という赤司の切り出しから純奈は黙ったまま車椅子に座った。
赤司は純奈に声をかけることもなく押していく。
病室に戻るまで、二人の間に会話はなかった。
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