「こうなる前に、緑間先輩とか…黄瀬先輩とか…黒子先輩とかに…美里香のこと、話そうとしたけど、全然…聞いてもらえなくて…」


「青峰先輩と紫原先輩は…いつも、ずっと、めんどくさそうにしてて…そんなこと話せる空気じゃなくて…」


「桃井先輩は、美里香と仲が良いから…やっぱり、私の話なんて…信じてくれなくて…それどころか、話すとどんどん私が悪くなって…」


「…赤司先輩には、迷惑かけるなって…みんなから言われて…怖くて、話せなくて…」


「…美里香がいきなり変になっちゃったから、あんなことになったのに…誰も、誰も、助ける、どころか…聞いても、くれなくて…っ」





最後の方は声が震えていた。
もう、ここまでしか言えそうになくて口を閉じる。

夕日に染まった空が、滲んで見えない。

それでも言いたいことは少しでも伝えられた。
赤司先輩はまだ何も言わない。
橙に染まった世界にまるで一人取り残されたような気がした。


怖い。

お願いだから、なんでもいいから何か言ってほしい。

お願いだから…。


返事はなかった。
でも、頭の上を何かに触れられる。
それがすぐに赤司先輩の手だと分かった。
そこで目に浮かんでいた涙が堰を切るように溢れて頬を伝っていく。

赤司先輩の声がすぐ近くから聞こえてきた。



「…辛いことを思い出させて、悪かった」










本当じゃないなら、辞めるなんて言うのは可笑しな話じゃないか

あまり心配させるな

純奈は、僕に謝らないといけないことは何もしてないよ

僕は、純奈を信じる

何かあったとき、僕には教えてほしい











どうして

どうして、赤司先輩は

私がずっとほしくてどうしようもなかった言葉を、まるで最初から分かっていたかのように、こんなにも当たり前のように与えてくれるんだろう。





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