「あの…今日シャーペン忘れて…何か鉛筆とか持ってないかな?よかったら今日だけ貸してほしいんだけど…」





帝光に入学してから、最初に席替えをしたときにちょうど隣の席になった相手。それが純奈だった。
まだクラスの人たちを把握していなかったこともあり、そのときが純奈がクラスメイトだと認識した瞬間だった。
優しそうで大人しそうな子。第一印象は決して悪いものではなく、そのようなものだったと思う。

忘れ物をしてしまい、けれど周囲に話したことがない人ばかりだったからあえてあたしに声をかけたのだろう。
申し訳なさそうに言われてすぐさまペンケースから持っていた余分のシャーペンを手渡した。

なんとなく嬉しかった。入学したばかりにしては友達が多い方とはいえ、これからの新生活に不安を抱いていたときだったからこそ余計に。
大抵の女子はいまいち意味の分からない理由を引き合いに出して自分に近付いてきていたから、大したことではないけれど初めて頼ってもらえたような気がした。


『同じクラスになって初めて見たときからすごく可愛いなって思ってたの!』

『見咲さんって超可愛いよね、よかったらメアド教えてよー』


思えば、あたしに躊躇いなく近付いてくる人たちとは深い関係を築ける気がしなかった。
向こうもそこまで深入りする気がないからこそ気軽に声をかけてきたのだろう。
そういう人ばかりではないと思ってはいるけれど、なぜか心を開けなかった。
逆に、大人しくて周囲をよく観察するタイプの女子たちは自分たちとは真逆のタイプの女子たちに群がられているあたしを最初から敬遠していたのかもしれない。
どうせ自分も同類だと思われている。そう思い込んでいたからこそ、純奈が普通に声をかけてくれたことは意外だった。

それから席のこともあり、純奈は頻繁に声をかけてくるようになった。


純奈と話しているのは楽しかった。

一緒にいて誰より気が楽だった。


興味本位で近付いてきたクラスの人たちも、あたしがいつも純奈と一緒にいるものだから最初の頃のようには声をかけてこなくなってきた。
帰りのときも、体育のときも、移動教室のときも、いつも純奈と二人でいたからだ。
もちろん、クラスメイトたちに全く声をかけられなくなったわけではない。
ただ純奈と過ごす時間が多くなった。











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