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「で、雅治」

「ん?」

「…どうしてこうなったんですか?」


ヒロを引きずって開いていた書道室で新聞を広げ髪を切ってもらっていたらヒロが今まで口を開かなかったのに突然聞いてきた


「さっき教室で言った通りじゃ、先輩の呼び出しだって気づかんでノコノコ校舎裏に行ったらこのざまじゃ」


そう言うとヒロはまた黙り始めてハサミが髪を切る音だけが教室の中を満たす


ちょきん


ちょきん


ちょきん


何回もハサミが髪を切る音を聞いたあとにまたヒロが口を開いた


「雅治できましたよ、それにしても随分短くなった…」

後ろ髪は携帯で写真を撮ってもらって見るとヒロくらいまで短くなっていた


「ヒロよりは長いかの?」

「襟足なら雅治のが多少長いかもしれませんが大して変わりませんね」


ヒロは俺の肩についた髪を払い落としている
やはり家じゃないと道具が少なくタオルを首に巻くくらいしか出来なかった



「雅治」

「ん?」


またヒロに呼ばれ振り向く


「今回はそこまで怪我をしなかったからよかったですが……」

「分かっちょる、今度からは気をつける」

「はい、そうしてもらえると安心です」


ヒロは心配そうに俺を見ていた
今思うと何回くらい困った顔をしたヒロを見てきただろうか


自分から喧嘩をふっかける事をしたことは無いが俺はよく喧嘩を売られていた
だから戦うつもりが無くても喧嘩…というか正当防衛する羽目になるのが多くて"いかに喧嘩を売られないようにするか"について同学年のテニス部メンバーで考えた事もあったな


まぁ全部正当防衛って認められて処分を受けたことは無いけどな、だけど生徒指導室の常連にはなったから変な噂がいっぱいあった



「もう大丈夫じゃって、喧嘩なんぞせんから」

「分かっては居ますが…」

「そうじゃ!」

「?どうしました」


俺は結構平穏な生活を送ってるのに何故こんなにも絡まれるかとか考えれば答えはきっと髪の色だ

いや、どう考えてもそうだ
あのテニス部会議にも出てきた案じゃし

中学に入る時姉貴が「舐められないように染めてやんよ!」と姉貴の自己満足の為に髪を染められたんだ


1回黒染めしたら姉貴に怒られたから染め直したけどな…
今はヒロも居るし姉貴にきっと勝てる


「家に帰ったら髪染めるぜよ」

「え、あ、話が見えないのですが」

「3年が卒業するまでもあと少しじゃ、だからそれまで髪を銀から黒髪に戻すぜよ」


そう俺の地毛は黒髪である、だがなぜヒロが茶髪なのかというと答えは簡単
こいつが小学校六年間プールに通っていたからである

でも黒髪にしたらしたでダメかの……ここはヒロに合わせるべきか…


「あんまり話の意図を掴めませんが黒髪ですか…想像がつきませんね」

「まぁお前は銀髪の俺しか見たことないからのぅ、夜ご飯食べたら染めるぜよ!」

「がんばってくださいね」

「何言ってんじゃ、お前も手伝うんじゃからな」

「え」


しばらくの沈黙、だがお互い目があってポカーンとしているヒロがおかしくて笑った


「っははは、ヒロの、顔…っぷ」

「なっ雅治の方が全体的に変な顔ですからね」

「俺の顔とお前の顔は大差ないですよー、柳生さんのばーか」

「馬鹿って言った方が馬鹿なんですよ」

「俺1回しか言っとらんし、ヒロ2回も馬鹿言うたし」

「今ので2対2になりましたねーま・さ・は・る君」

「〜〜〜っ!」



そんなしょうもない言い争いをしている間に書道室に来てから三回目のチャイムがなった


「あ、6時間目終わりましたね」

「次集会じゃ、急ぐぜよ!」

「当たり前です!」




(………)
("なんだが背後のヒロから視線を感じるぜよ…")
(………)
("なんなんじゃろうか…")
("尻尾がパタパタしない…")

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